丹野 篤史
フォトグラファー & RCCメンバー
福岡はコンパクトな街だ。 ターコイズブルーがキラキラ光る糸島の海も、セクシーなワインディングが続く脊振山も、30分も走れば行くことが出来るし、街では、音楽、カレー、アート、ファション、コーヒー、酒場、銭湯、...様々なカルチャーが寄り添いあっている。小さな街だから、友人が友人を繋ぎ、面白いことが生まれて行く。そんな福岡の人と街が好きで、だから僕はここで生活し、自転車に乗っている。
フォトグラファー & RCCメンバー
福岡はコンパクトな街だ。 ターコイズブルーがキラキラ光る糸島の海も、セクシーなワインディングが続く脊振山も、30分も走れば行くことが出来るし、街では、音楽、カレー、アート、ファション、コーヒー、酒場、銭湯、...様々なカルチャーが寄り添いあっている。小さな街だから、友人が友人を繋ぎ、面白いことが生まれて行く。そんな福岡の人と街が好きで、だから僕はここで生活し、自転車に乗っている。
今はフォトグラファー。昔はDJ。もっと昔はギタリスト。10年後は...自分でもどうなっているのか分からない。でも何かの表現活動をしていることと自転車に乗っていることだけは断言できる。それが自分だから。予定調和がむず痒い。飽きたら次に移行する。
新しい体験をしたい。何が起こるのか分からないことが喜び。ライドも同じ。知らない土地、知らない道、一期一会、それが僕のライドのスタイル。
『自転車こそ最高に自由な乗り物。もちろん写真も自由。ルールは無い。何をやってもいいのが写真の面白さ』
– 丹野 篤史
偶然と即興が重要。意図されたものなんてつまらない。解説の必要もない。タマシイが震えるかどうかが大切。ライドも同じ。偶然を楽しみ、即興で走ろう。そしてタマシイを喜ばせよう。
否応なしに人間の根源的な部分を刺激する。ここではないどこかへ連れて行く音楽の魔力。ライドも同じ。いろんな場所へ連れて行ってくれる。物理学にも精神的にも。ジャーニーでありトリップだ。ドラッグはいらない。ナチュラルにぶっ飛ぼう
『頭をからっぽにしよう。色、形、匂い、風、熱、音、自然と一体化して全てを全身で感じよう。自転車に乗れば簡単。もっと自由に生きよう。肩書き、しがらみ、こだわり、面倒なものは全て捨てよう。自転車に乗れば簡単』
– 丹野 篤史
バイクショップ オーナー & プロメカニック
祖父の自転車店を軽い気持ちで継いだ時、高校を卒業したての彼女が自転車について知っていたのはパンク修理やハンドル調整程度でした。田方佐矢子氏のプロメカニックのキャリアはそうして始まりました。自身もロードレースとシクロクロスに出場する彼女は、今も祖父の店を大切に営んでいます。
初めてライドに出かけたのは誰とでしたか?彼らはどのようにあなたに影響を与えましたか?
いつも様々なことを教えてくださっていた常連のお客様たちと初めてのライドに出かけました。キツかったけど、風を切る気持ちよさと達成感、みんなで一緒に頑張る楽しさを知りました。それは、たくさんの人や場所に出会うきっかけになり、私の世界を広げてくれました。
あなたはサイクリングを始めたばかりの人に何を伝えたいですか?
自転車に一人で乗るばかりではなく、思い切って出かけることをしてほしい。隣の市でもイベントでも思い切って出かけてみたら、誰かと知り合ったり、素敵な道を見つけたり、気付かなかったお店があったり、達成感を感じたり、たくさんの出会いがあるから。
『隣の市でもイベントでも思い切って出かけてみたら、誰かと知り合ったり、素敵な道を見つけたり、気付かなかったお店があったり、達成感を感じたり、たくさんの出会いがあるのです』
– 田方 佐矢子
たくさんの興味深い(そしてあまり知られていない)路があると思いますが、私たちはホンモノの『ローカル情報』が詰まったライドを求めています。そんなライドについて教えて下さい。
車が多く通る道を一本入る。小さな川を横目に坂を走る。田んぼと小さな民家。時折優しく声をかけてくれるおばあちゃん。そんな田舎道を少し抜け、木々の揺れる音、風が抜ける音、鳥の声しかしない、土と緑の香りのする少し荒れた細い坂道を走る。どこに続くんだろうと思うそんな道の先には、誰が使うのか分からないような立派な綺麗な道が現れる。その道の途中、こんな所に誰が訪れるんだろうという小さな草原の中にポツンと木の展望台。具体的にどのルートでなくて、この辺ならどこでもあります。息苦しくなった時、呼吸ができる道と場所あるのがいいです。
あなたの街の簡単な説明を書くなら、この説明から欠かせないものは何ですか?
海と山、桜、石垣、多くの別れがあった悲しい歴史、昔からあるモノとこれからのモノがあって、大きくも小さくもない、ゆっくりとマイペースな時間が流れる街。
お店の店長となった経緯を教えてください。
高校3年生の時に末期がんと宣告されたおじいちゃん。私の家は会社員の父と専業主婦の母で、おじいちゃんが自転車屋さんをしていたことを忘れていたくらいそれまで関わることのなかったおじいちゃんのお店を、進路の決まっていなかった私に継ぐように勧めたのは両親。
イラストを描くのが好きだからその関係の仕事をしたいな。と、ぼんやりと思っていたし躊躇もしたけど、「在庫を売ってしまったら別のお店にしていい」という言葉と、ハッキリとやりたいことのわからなかった私は、同級生とは違う進路を選ぶのも面白いかなぁ。と、軽い気持ちで継ぐことにしました。
継ぐことが決まってから、高校が終わると帰りにお店に手伝いに行くようになりましたが、おじいちゃんとは口喧嘩ばかり。強がりのおじいちゃんは、私の生意気な口答えに応えるほど末期がんの辛さを最後まで私には見せませんでした。そして、高校卒業前に亡くなってしまい、教えてもらった修理は通学用自転車のハンドルの下げ方とパンク修理だけ。「どうしてこんな店残したの!? 修理わからないし、お客さん来たらどうすればいいの!?」と、高校を卒業していきなり一人で自転車屋さんをしなければいけなくなった私は、軽い気持ちで引き受けたことに後悔し、正直おじいちゃんを恨みました。「なんで私が…もうこんな店辞めたい」と、何度も思いながら、わからないなりに自転車屋さんを続けました。
しかし、だんだんお客様が来るようになると、大変さとおじいちゃんのすごさがわかりました。おじいちゃんに感謝を述べる方が訪れたり、「孫が継いでくれるんだ」と周りに嬉しそうに話していたという話を聞き、だんだん気持ちは変わっていきました。自転車屋さんを継いで10年経って、ようやく自転車に乗るようになって、自転車に乗ることでたくさんの人やたくさんの場所と出会うことができた今、私に誇れる特技と個性をくれたおじいちゃんには、感謝しかありません。
『隣の市でもイベントでも思い切って出かけてみたら、誰かと知り合ったり、素敵な道を見つけたり、気付かなかったお店があったり、達成感を感じたり、たくさんの出会いがあるのです』
– 田方 佐矢子
空間 & プロダクトデザイナー
福岡と東京を拠点に活動する空間・プロダクトデザイナーで、CASE-REAL(ケース・リアル)を主宰する二俣公一氏。そんな彼を自転車に惹きつけたのは、20代前半で出会った慣例に従わないデザインのモールトンバイクと、その革新的な構造でした。以来、デザイナーの感性を刺激された彼は、九州の緑豊かな山や島、青が映える海岸を2つのホイールにまたがって駆け巡っています。
福岡の特別さとか他の街との違いとか感じること、福岡を独特にしているもの、要素とは何でしょうか?
感じるのは、地形的なことかなと。自然に囲まれたの平野の中に街がキュッとコンパクトに集中していて、そこにほとんどの物が詰まっていて、そこから自転車で30分行くと、山があって海があってその先に小さな島があって。いいロケーションがたくさんあるのもすごい特徴かなと思うんです。九州自体がまず人の動きというかペースとか、気持ちがすごくゆったりしてるなと思うところもある。その中でも福岡位のスピード感とか生活のリズムとかはちょうど良いというのを感じます。適度にシビアだけど適度にゆるさもっていう、そのさじ加減。それってたぶん、地形的な要因からも来ている部分かなと。
建築から工業デザインにインテリアと色々な仕事をしていますが、自分の中で私はこれです、って1つにまとめられますか?
ひとくくりにするとデザイナーってなってしまうんですけど、基本的には建築、空間、インテリア、プロダクトっていうところを分け隔てなく考えていて、もちろんプロセスとか社会的なことを相手にしたときの違いっていうのはあるんですけど、自分の中では自分のできるモノ創りの範疇に、どれも合っていると思っているので、ここをトータルで徹底的にきちんとやりたいと思ってやってきました。本当にどれとも言いたくないですけど、大きく言うとデザイナーとしか言えないという感じです、全部あるという気持ちでいます。
『自転車だと全部が自分の気持ち一つでコントロールできるというか、スピードもそうだし、風景が変わっていって気持ちいいなと思ったらスローダウンしたり、止まってみたり。そういうことが自由だし、すごく開放されている感じがありますよね』
– 二俣 公一
サイクリングと出会った時ときっかけは何でしたか?
自転車は、初めてハッとしたのが、23〜4歳くらいの時にモールトンを見た時。プロダクトの観点から見た時の素晴らしさにまず惹かれて、モールトンを買ってみたのが一番最初のスタート。仕事柄プロダクトのことをずっとやってきたので、メカだったり機械的なものが大好きだし。とは言っても当時高いお金で買えなかったので、まずブリジストンモールトンを買って。乗ってるうちにいろいろな思いが育っていって、ある福岡の老舗の自転車屋さんに通うようになって。そこから自転車との本格的な付き合いがはじまったという感じだったんです。それから何台もの自転車を作ってみたり乗ってみたり…ここ数年は友人たちとたまにツーリングも行くんですけど、遠隔まで車で自転車持っていって気持ちのいいエリアを回るとかするようになって。大分の耶馬渓とか壱岐まで船で渡って行ったりとか。
クリエイティブな仕事をしている中で自転車に乗ることによって助長されることはありますか?アイディアを求めて乗ったりしますか?
どちらかと言うと、自転車乗ってる時は、もっと開放されてて、なんかそういう集中力はそこに向かっていない気がしますね。でも、友人たちと一緒に行くと、今こういうものを仕事でやってて...とかいう話はする。そこにみんなが被せてきて話が発展したりもします。でもやっぱり、もっと開放された状態で無心なことの方が多いですね。とにかく風景と風を楽しむというか、本当にリラックスしている時間というイメージですね。普段がいろんなことを考え過ぎているので。
『福岡の人や街のスピード感やリズムってちょうどいい気がします。適度にシビアだけど、おおらかで人間臭いさじ加減の良さもあるというか』
– 二俣 公一
形や機能の重要性、人が使う物というところで建築とか工業デザインとかとすごく大きな関連性があると思うんですけど、そのことについて、自転車の見方、視点というのは、仕事がらのプロフェッションから影響されて見てしまいますか?
そうですね。やっぱりどれくらい機能的に美しいかとか、納まりがどれくらい考えられているかとか、ということに目がいきがちで。それは自転車だけじゃなくて、何でもそうなっちゃうんですけど、特に自転車は人で言うと骨や血管、筋肉とすべてが見えているような構造なので、余計に全部見ちゃいますよね。気になってしょうがないというか。しかも、歴史的に自転車はすごく古くて、人力でこれだけ効率よく走れるようにできていて、その構造に無駄がないっていうのはすごく美しい乗り物だなと、通い詰めていた自転車屋さんで感じるようになって。そういうところに仕事柄すごく魅了されてきたっていうのはすごく大きい。だから、どうしても国柄とかパーツメーカーとか、コンポーネンツとかの歴史的な背景とかそういうところまで気になってくるので、それを調べたり興味を持って、見て触れてきたっていうのはあるかもしれない。
効率の話は、スティーブ・ジョブズが自転車の効率の話をした時のインタビューに似てますね。
すごい乗り物だなって思いますよね。人の力だけが原動力になってあのスピードが出るっていうのはちょっと、すごい発明だなって思うんですね。
全部が自分の気持ち一つでコントロールできるというか、スピードもそうだし、風景が変わっていって気持ちいいなと思ったらスローダウンしたり、止まってみたり。車とかだと、厳格な交通ルールの中で、止まりたいけど止まれないとか、スピードが早いので流れる風景や発見も見過ごす時もあるのだけど、自転車だとそういうことが自由だし、すごく開放されている感じがありますよね。